ずっと見てきた

「ペンを回すな」

「肘をつくな」

「脚を出すな」

「壁にもたれかかるな」

「背筋を伸ばしなさい」

「目を見て話を聞きなさい」

「挨拶をしなさい」

「プリントはきちんと重なるように折り曲げなさい」

「かばんの中には必要な物だけを入れておきなさい」

「字をゆっくり書きなさい」

「メモ帳を見なさい」

「時間を守りなさい」

「約束を守りなさい」

 

…ごく、ごく、一部。

とにかく浴びせ続けた。
何度も声を荒げた。

そして、それ以上に
小さな光を見つけては励まし続けた。

 

 

中1夏
ようやくチェックペンを使って勉強するようになった。

暗記が好きになった。

英語は他の人よりちょっとだけ得意になった。

英語には自身も少し自信をもっていた。

挨拶の声が大きくなった。

単語ではなく、文で話すようになった。

 

 

中3秋
休みがちになった。

塾をやめようともした。

それでも、はい上がった。

なんとか、食らいついた。

 

 

入試前日
「いい加減な気持ちで受験はしないこと」

「今までやめずにこれだけ頑張ってきたのだから、頭の中のどこかに絶対引き出しがある」

「その引き出しを時間いっぱい探して開けなさい」

 

 

入試当日
集合時間の30分前から駅で待つ。

10分前に現れた。

「よかった…遅刻しなかった…」
ほっと胸をなでおろすと同時に
こちらに向かってくるその姿を見て、
自然に涙が込み上げた。

「私より長く学志館にいるのだから大丈夫」
「自信をもって行ってきなさい」

「はい…」とはにかみながら、
でも、しっかりと答えた。

背中は3年前より大きく、たくましく見えた。

 

 

決して見逃さなかった。

絶対に見放さなかった。

ずっと見守ってきた。

本当の意味で「見て」きた。

 

 

そして、今日がある。

涙まじりにお母様からのお電話。

大逆転合格
おめでとう。

本当によく頑張った。

最後まで決して諦めなかった。

ほんの通過点。

これからがこれまでをつくる。

これからも見させてください。

ずっと見守り続けます。

これまでついてきてくれてありがとう。